地味子、学校のイケメン二人と秘密の同居始めます!
 こんなのもただの八つ当たりでしかない。
 別に魁吏くんが悪いわけじゃないのに、幼稚に叫ぶのをやめられない私を呪いたくなる。
 ああ、なんでかな。
 泣きたくないのに涙が止まらないや。
 魁吏くんにめんどくさい女って幻滅される前に止めなきゃなのに・・・・・・。
 「〜〜〜っ、絢っ!」
 「・・・・・・えっ」
 身体が何かふわりと包み込まれる。
 しかし、柔らかかったのも一瞬ですぐにそれは力強いものへと変わった。
 頬に、硬い胸板が当たる。
 「えっ、えっ、魁吏くん・・・・・・?」
 「絢、落ち着け」
 「う、うん・・・・・・」
 言われた通りに落ち着こうと、スーハースーハーと魁吏くんの腕の中で深呼吸する。
 でもその間も私の頭の中は「?」で埋め尽くされていた。
 えっと、今はどのような状況で・・・・・・?
 魁吏くんの腕が私の背中に回ってて、それで私は魁吏くんの腕の中にすっぽりいてて・・・・・・。
 ・・・・・・・・・・・・。
 ・・・・・・抱きしめられてる!?
 そのことを自覚した瞬間、ぼっと顔が熱くなった。
 「絢、落ち着いたか?」
 「え、あの、先程の件では少々落ち着きを取り戻したのですが、今私はそれどころではなくて・・・・・・?」
 早口でわけわかんないことをつらつらと並べ出す。
 あわあわという言葉が、今の私にはよく似合ってると思う。
 それよりも魁吏くんは、さっきからなんて・・・・・・。
 「絢、って言った?」
 「・・・・・・・・・・・・」
 確かに言ってたよね!?
 魁吏くんは黙ってるけど、私聞き逃してないからね!?
 私、聴力検査で引っかかったことないんだから!
 「・・・・・・言った、言ったよ!」
 「え、なんで、今まで桃瀬だったのに」
 「〜〜〜っ、機会がなかっただけで、俺だってお前のこと名前で呼びたいっつうの・・・・・・」
 腕の中で魁吏くんを見上げていると、茹でだこみたいに顔を真っ赤にした魁吏くんが白状した。
 ・・・・・・なんだろう、かっこいいはずの魁吏くんがちょっと可愛い?
 衝撃で、さっきまでの怒りがどこかへ吹っ飛んでいってしまった。
「それに、晶もずっと絢ちゃん絢ちゃんってあだ名で呼んでるし・・・・・・」
 「・・・・・・プッ、アハハハハ!」
 「おい何笑ってんだよ!」
 いつもの冷静さを完全に失ってる魁吏くんがなんだか可愛くて、思わず吹き出してしまう。
 今だってジロって睨まれてるけど、全然怖くない。
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