ヨルガオ-午前0時の逃避行-

「どういうことですか?」


「さっき話を聞いていて思ったんだけど、光莉って杏樹に少し似てるんだよ。あいつも『家に居場所がない』ってフラフラしてた。事情は違うにせよ、杏樹と同じ理由でふらつく光莉を見て、由良は放っておけなかったんじゃないかな」



私はずっと、由良くんが優しくしてくれるのは、そういう人だからだと思っていた。


居場所をもとめる私を連れ出してくれたときも。

深夜にも関わらず駆けつけてくれたときも。

温もりがほしくて一緒に寝てほしいと縋ったときも。


乏しい表情の中に優しさをいっぱい詰め込んだ人だと……。


だけど本当は、その優しさにたくさんの経験や想いを隠していた。


私はそういう本質の部分を見れていなかった。


『由良くんが捨てようとしているものを拾い上げていく』って言ったのに、拾うどころか、由良くんの持っているものにすら目を向けていなかったんだ。


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