青の先で、きみを待つ。



家庭科室では教室とは違い、ひとつのテーブルを六人で使わなければならない。さらにもっと気まずいのが私の正面が美保ということだ。

お互いに一瞬だけ視線が重なったけれど、すぐに美保から逸らされた。

話さなくなって随分時間が経つけれど、この寂しさにはまだ慣れない。

「ってか先生! 私、ロッカーに入れておいたアクセサリーがなくなってたんですけど!」

「俺も机の中に置きっぱにしてたゲームがやられたっぽい」

なにやら、落書きだけではなく、盗難被害もあるようだ。

「それも現在警察の人に頼んで調査をしてもらってます。他に貴重品等が紛失した人は先生のところへ相談しに来てください」

噂によると、昨日の放課後にはすでに被害が確認されていて、部活をやっていた生徒たちのカバンから財布なども抜き取られていたそうだ。

落書きをした人と、窃盗をした人が同一人物かはわからない。

けれど、この事件によって、ひとつだけ現実世界での出来事を思い出したことがある。

それは去年の夏。あの時も体育館が落書きをされていて、生徒たちがこぞって見にいっていた。

そんな中で、もぬけの殻になった教室が狙われて、何人か貴重品を盗まれるという被害が起きたのだ。

たしか、あの時の犯人はすぐに捕まったと聞いた。それが誰かまでは知らないけれど。


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