青の先で、きみを待つ。



「あー、なんか安心したら、急にお腹が空いてきちゃったよ」

美保は肩の力が抜けたからなのか、まだ一限目だというのに、そんなことを言っている。

たしかに私も気が抜けちゃった。するとおもむろに橋本さんがカバンの中を漁り始めた。

「私、チョコレート持ってるよ」

「えーこれって限定のやつでしょ? なかなか手に入らなくない?」

「うちのマンションの下がコンビニだから」

「そうなんだ! それって三丁目にあるマンション?」

「うん、そうだよ」

橋本さんと美保が話している。なんだかそれが奇跡みたいで嬉しい。

いじめはきっとなくならないし、明日からどうなるのかもわからない。でも不思議と怖くないのは、それでも一緒にいてくれる人がいるからだ。

いじめはなくならないけれど、ひとりじゃなかったら耐えられる。

強さとはなにか、弱さとはなんなのか。

私たちは人から傷つけられたぶん、そうすることでしか優位に立てない弱い人を知っている。

橋本さんや美保の笑顔を見て、現実世界の自分と重ね合わせた。

私は逃げてしまったけれど、いじめの先にあるのは絶望だけじゃない。

きっときっと、希望もあると強く信じている。



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