離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
「あっという間だったね。最後の日に『タチバナホテルズ』のレストランでご飯を食べられるなんて最高だよ」

「もっと早く言ってくれたら毎日でも席をとったのに。俺が誰だか知らないわけじゃないだろ?」

「あ、偉そう」

 私が笑ったのを見て智秋も笑う。

 中小企業の秘書課に務める私、朝日奈(あさひな)咲良(さくら)と違い、この人は京都で、いや日本でも有名な旅館『たちばな』の若旦那だ。彼の弟は私たちが今いるホテルを経営している若きホテル王、橘深冬(みふゆ)。

 だから智秋にお願いすれば多少の無理は叶ってしまうのだ。そうはいっても彼の持つ多くのものに頼っていい思いをするつもりはないが。

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