離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました

「こちらこそ、シングルマザーでずっと大変だったよね。大事に育ててくれてありがとう。今日と明日はたくさん親孝行するから遠慮なく旅行を楽しんで」

「ありがと、さっちゃん。でも言うほど大変じゃなかったのよ。母親ってね、守るものがあると強くなれるものなの。なんだってできちゃうんだから」

 私は早くに亡くなった父の顔を覚えていない。母が言うには前向きで明るい、優しい人だったそうだ。

 気の強そうな顔立ちの母と違い、私は垂れ目で輪郭も丸っこく、ぼんやりした顔をしている。そこが父に似ているようで、母はしきりと私をかわいがった。

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