カクレンボ


 結局、ケーキは数十分のうちになくなってしまった。ケーキと一緒に飲んだ、雪の入れてくれたココアがまた美味しかった。ケーキを食べ終わったことで、特別な時間が終わりを告げた感じがして少し寂しい。

 今度こそお腹の容量が限界を迎えたのかテンションを上げすぎて疲れたのか、空と桜は机に伏せて眠ってしまった。空がさっきまで風邪を引いてたことなんてもう覚えてないくらいの元気さだった。

「寝ちゃったね二人とも」

「疲れたのかな。お子様なところは昔からそっくり」

 両手に毛布を抱えた雪は二人に2つの暖かさを兼ねて毛布をかけた。

「ココアまだ飲む?」

 雪が自分のココアのカップを持ち上げた。既にわたしのココアももうなくなっている。数秒時間をおいてから「じゃあ飲みたい」とカップを雪に渡した。

「ちょっと、外でない?」

 湯気の立ち込めるカップを持って、雪はベランダの戸に手をかける。何も言わずに雪についていく。外は溢れんばかりの冷気が充満している。この街の光ひとつひとつが人間の営みだと考えると、ただの光に思えなくなる。 

「うーさむい」

 長袖の厚着のパジャマでもこの寒さ。わたしは両腕を擦る。

 たまたま置いてあった2つの椅子を近付けて座る。

 冷えた体に熱々のココアを入れ、食道を熱湯が通り過ぎる感覚を味わった。

「雪、止んじゃったね」

「でも積もってるよ。ほら、地面」

「ホントだ!真っ白」

 ベランダの塀から下を見ると、暗い闇の中に、真っ白い雪が積もっているのが見えた。屋根にも、地面にも、街を走る車の上にも。

「きれいだ…ね」

 地面を見つめたまま雪の視線が上がってこない。何かを見てるようで何も見てない。虚無だ。

「雪?どうしたの?」
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