柳の木の下で貴方が言葉を拾ってくれた



蓮二に友達とカフェに行きたいと返信すると、蓮二から18時に帰ってこいと許しが出た。

私は七絃に家に18時に帰らないといけない旨を伝え、放課後久しぶりに七絃と遊ぶことが出来た。


「ここね、怜と行きたかったんだー。すごく落ち着く場所なんだよ」


七絃は前にも来たことがあるのか、色々とお店の説明をしてくれた。

シックな店内にアンティークな置き物があり、どこか心が和やかになる雰囲気。私もここが気に入り、また行こうねと七絃と約束を交わした。


飲み物を飲みながら学校と変わらぬ笑顔だった七絃が、突然悲しい顔になった。



「怜、私が怜の力になれることってないのかな」



それは今の状況のことを言っているのだろうか。そんなに私は心配をかけるような表情をしていたのだろうか。


「七絃、心配かけてごめんね。こうして、私の傍にいてくれるだけで救われているんだよ」

「本当?本当にそれだけで救われているの?」

「勿論だよ。変わらなく一緒にいてくれるだけで、私は凄く嬉しい」



「じゃあ、なんで、時々泣きそうな顔をしているの?」



「…っ」


答えに悩む。


誤魔化そうとしたところで、そういうふうに見られてしまっては誤魔化しや嘘は通じない。でも、本当のことを話せば危険になるのは七絃だ。



「ごめんね。それでも言えない。ちゃんと笑えるように鍛えとくね」



力なく笑って見せるけど七絃は納得が出来ないようで、悲しそうな顔のまま。

私達を取り巻く空気はどんよりと重い空気だった。そんな空気のまま私達がお店を出る頃には17時半を回っていた。



このまま、一緒にいることに息苦しくなった私は七絃に別れを告げる。


「そろそろ帰らないといけないから、また学校でね」

「…うん」


お店の前で別れた七絃の後ろ姿は悲しそうで、そういうふうにさせている私自身に腹が立って仕方がない。


上手く言葉で伝えられず、表情も作ることが出来ない私は周りに迷惑をかけてしまっている。


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