甘い悪夢へようこそ
三日月が怪しく輝き、どこか古びた二階建ての大きな屋敷を照らす。その屋敷の一室、天蓋付きの大きなベッドに一人の少女が眠っている。ミルクティーブラウンの肩より少し長めの髪に、ぷるんと潤った赤い唇、白くて華奢な体はレースやリボンがついた可愛らしいネグリジェを見に纏い、まるで眠り姫のようだ。

「んっ……」

少女の目がゆっくりと開く。開かれた瞳は、シトリンを思わせる黄色だ。少女は不思議そうに辺りを見回し、「ここ、どこ?」と呟く。

少女が寝ている部屋に置かれた家具などは全てロココ調で、まるでお姫様になったような気分である。少女がふかふかのベッドを降り、可愛らしいクローゼットを開けると、そこにはお姫様が着るようなドレスが何着も入っている。

少女はドレスをしばらく見つめた後、ゆっくりとクローゼットを閉じ、自分のことを思い出そうとする。少し経つと、自分の名前がミア・アンバーで、両親を十二歳の頃に亡くし、親戚の家に引き取られたということだけは思い出せた。
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