短編小説集


「ちょっと、本当に鬼なんて出るのー?」
「僕のジイチャンが昨日、そう言ったんだから間違いない」
「ふーん、まぁ、こんな間夜中のお寺だったら出てきてもおかしくないよねー」

丑三つ時、寺の前をウロウロする2人の耳に足音が聞こえてきた。


「あ!お母さん達に家を勝手に抜け出した事、バレちゃったかな?怒られるよね」
「うん、ヤバいな。どっかに隠れるか?」
「そうだね!お寺の裏に…」
「お前達、どこに行くんじゃ」
「やべ!ジイチャンの声だ!」

幼なじみの声に振り返るとそこにいたのは…


「…ヒッ!」
「だ、だれだよ…」
「ワシか?ワシはお前のジイチャンじゃよ」

そこにはニタリと笑みを浮かべる鬼がいた。
鬼は楽しげに幼なじみだけを見ている。


「うわぁぁぁぁ」
「いやぁぁぁぁぁぁ」

それは一瞬だった。
鬼が動いたと思った時にはもう、
バキボキと骨が砕ける音が辺り一面に響いていた。


「…孫の味は格別に美味い」

跡形もなく幼なじみを食した鬼は、スルスルと歳のとったお爺さんに変わっていった。

身体中、幼なじみの血が大量に付着している。


「…バ、バケモノ…」
「オヤ、そう言えばまだいたんじゃったな。もう、腹が一杯なんじゃが」
「…ヒッ」

お爺さんが鬼の姿へと変わっていく様子を、腰の抜けた私は必死に地べたを張って後退りしながら見ていた。

「ガァァァ」
「…ァ…」

鬼へと変化したそれは私と目が合った瞬間、私の身体中に痛みと熱を感じた。
そして意識がとぎれるーーー



「まーた神隠しにあった子供がいるんだってよ。今回は2人もなんだと。コワイなぁ」






< 27 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop