首取り様3
☆☆☆

それから佳奈は1人で慎也の部屋へ向かい、クローゼットを開けた。


ここを開ける瞬間はいつも緊張する。


もし慎也の体になにかよくない変化があったら?


もし、慎也の首が元に戻っていたら?


様々な不安と期待を胸に開けるのだけれど、そこに横たわっている体にはなんの変化も見られなかった。


相変わらず首はなく、それなのに腹部はしっかりと上下して呼吸を繰り返している。


タオルケットで隠されている体に触れると人間らしいぬくもりを感じた。


そのまま慎也の体に抱きつくようにして心音を確認する。


もう何度こうして慎也が生きていることを確認してきただろうか。


そうしていると今回もジワリと涙が滲んできてしまった。


止めようとしても止められず、次から次ヘと涙が溢れ出してくる。


本当に慎也と美樹を助けることができるんだろうか。


こんなところでボンヤリシている暇なんて、本当にあるんだろうか。


気持ちばかりが焦ってなにもできない自分がもどかしい。
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