首取り様4
早朝の早い時間だと言うのに、道路には人々がひしめき合っている。


すでに化け物や地蔵に遭遇した人たちが悲鳴を上げて逃げだし、それを見た人たちが釣られるようにして走り出す。


混乱した街はあっという間に地獄絵図と化しているだろう。


それは数時間後か、あるいはたったの数分で起こるかもしれないことだった。


そうなると自分たちが行動できる範囲も狭められるはずだ。


車やバイクが交通渋滞を起こせば、逃げることだってできなくなる。


いや、その前にあの化け物たちが道を通すかどうかも怪しかった。


もしかしたら数時間後にはこの街の住民たちはひとり残らず消されてしまっているかもしれないのだ。


地蔵の思惑通りに。


走って走ってたどり着いた先は慎也の家だった。


明宏は今の状況では2人を探し出すことはできないと判断したのだ。


明宏が手を伸ばして玄関を開ける寸前、すぐとなりに化け物が迫ってきていた。


油断していた明宏が気づくのが遅れ、手を伸ばしたままで体が硬直する。
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