ドラゴンの歌声
 目を凝らせばあちこちに穴が開いていて、小人の顔がこちらを覗いている。どうやら居住区らしい。

「ヒトはドラゴンを目の仇にしてるからな。お前らの持ってる卵もかえっては困るんだろう」
「だから追いかけてきたのか」

 飲み物と食べ物を勧めてくれて、この辺りのことを掻い摘んで話してくれた。

 ドラゴンのこと、ヒトのこと、小人のこと、そして他の生き物のこと。

「オレは青の洞窟の場所は知らないが、他のやつらなら知ってるかもしれない。もしなんか困ったら頼ればいい」
「こびとさん、ほかにもいるの?」
「ああ。いっぱいいるぞ。オレたちはドラゴンとも親交があるからな。卵のことを話せば力になるさ」

 そういって小人はパンにチーズのようなものをのっけて頬張る。木の実のサラダや、トカゲの丸焼きもある。

「その卵を持っている限り、お前らは人里に近づかない方がいい」

 食事を終えて細い道を進んでいく。

 ヒトがこんなに怖いなんて。大きな卵を背負った妹を見ながらハヤトは考えていた。大人たちに協力を仰げないことが、心細い。そんなことを感じながら。

「大丈夫、その石が導いてくれる」

 地下道が終わり、穴の外へ出る。チカの手首に、小人は口の中で何かもごもごいいながら紐を結んだ。

「だが、万が一ということもある。何かあったらその紐を解け。きっと助けに行くから」
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