ドラゴンの歌声
「最後の仕上げは、我らの言葉だ」

 本当であれば、親がすべきところなのだろう。それでもそれが叶わない時には、仲間が代わりを務めるのだという。声は幾重にも重なり旋律を奏でる。そして―――

「あ―――」

 卵に入ったヒビが広がり、仔ドラゴンの小さな頭が欠けた殻から出てくる。大きな瞳で辺りを見回したかと思うと、キュィィ、と鳥のような獣のような小さな鳴き声を上げた。

 洞窟を揺らす歓喜に満ちた声が口々に発せられ、反響して幾重にも重なる。

「皆、この者たちに祝福の唄を」

 興奮と祝福。両方を兼ね備えた声が段々とひとつの旋律を紡ぎだしていく。それは優しく穏やかな波となって辺りを包んだ。

「わぁ……」
「すごい……」

 ドラゴンたちの唄に反応するように、クリスタルが明滅を繰り返す。初めはゆっくりだったそれが、段々と光を強くしていく。

「さらば、わが友よ。未来に祝福あれ―――」

 一際大きな歌声が響き、光が視界を遮った。
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