イジワルな君の一途で不器用な恋心

「ん……?」



バッグを漁っている最中、一瞬、不審な人物が視界の端に入った。


ドアの近くに立つ中学生くらいの女の子。

その背後には、帽子を被った男の人がピッタリと密着している。


えっ……まさかあれって……。


目を見開いたその時、ガタンと車内が揺れた。


やっぱり……やっぱりそうだ! 電車の揺れに合わせてお尻触ってる!


決定的瞬間を目にし、痴漢だと確信した。


えっと、こういう時はまず、車掌さんに伝えるんだっけ。

『不審な人物を見かけたらお知らせください』ってアナウンスしてるの、毎日何回も聞いてるから。


キョロキョロと首を動かして車掌を探す。
……しかし、それらしき人は見当たらず。


そんな……これじゃ助けられない!


どうしよう、他の人に助けを求める? でも、結構混んでるから周りの人も気づいてなさそう。

というか、そもそもどう声をかければいいのか……。


モタモタしていると駅に停車。結局何もできず、人々の波に押されるように電車を降りた。


あの子、大丈夫かな。誰かが気づいてくれるといいけど……。


改札に向かうも、足取りが重い。

ダメだ。このままだと罪悪感が増す。

これ以上被害者を出さないためにも、駅員さんに伝えてから帰ったのだった。
< 15 / 314 >

この作品をシェア

pagetop