初恋を拗らせた幼馴染が婚姻届を持って溺甘淫らに求愛にやって来ました
 お隣から聞こえて来る、癇癪を起こし、縋り泣き叫ぶ女性の声に、私は慌てて、近くにあった上着を掴み、家を飛び出した。

「蒼の家、行ってくる! 」

「ニコ、私も行くわ」

 臨月を迎えた母も、重たいお腹を抱えて、隣の家へ一緒に向かう。

 玄関のドアを背に、頭を抱えて疼くまる男の子を見つけた。

「蒼! 」

 声を掛けると反射的に、顔を上げた彼は、血の気が引いて、真っ青を通り越し、真っ白だった。

 駆け寄って、彼の腕の赤にギクリッと固まった。


「……?! そ、蒼、血がっ!! 」

「……ああ、ごめん、驚かして。 大丈夫、大した事ない。 髪の毛を切られそうになって、避けたのが掠っただけ」

 自分の方が大変な状況なのに、私に心配掛けないように、ニコリと微笑む。

 私が手に持っていた上着を肩に掛けると、気が緩んだのか、彼はガタガタッと、震え始めた。
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