溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。



「千夏くんにね,告白,されたの」



言えるほうだけで答える。

後になって,もしかしたら言って良いことでは無かったのかもしれないと千夏くんを思い出した。

けれど最初に凪ならいいかと思ってしまったために,もう口から出てしまっている。

微動して,呼吸を止めた凪。

私が見上げようとすると,そっと後頭部に手のひらを置かれ,私はかくんと頭を落とした。

その後,凪の手のひらはゆったりとした動きを見せ,撫でられているんだと自覚する。

なんで急に……

珍しいことだとは思わないけど,今はより一層恥ずかしい気持ちが現れた。



「……うん,それで?」



落ち着いた凪の声。

そんな日常的な声色に違和感を憶えながらも,私はもう一度口を開く。



「その,まだ……断れてなくて。今は,まだ,友達だけど……どうにかしなきゃって思ってて」



何て言ったらいいのか分からないし,何て切り出したらいいのかも分からない。

なぁなぁにしちゃいけないって分かってても,関係を失うのは……こわい。



「……そっか。なんで? 返事,保留とか言われた?」



換気をしたような口元の軽さに,私ははくりと小さく口を開けた。
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