公爵騎士様は年下令嬢を溺愛する

第5話 ルーナの心配




カイル様に言われて、ハンナさんとお風呂にきた。

カイル様がかけてくださったマントの下は、雨でびしょびしょで、しかも途中で転んだから、泥まみれだ。
ハンナさんは、そんなマントの下のボロボロの服を見て、呆れると思ったが優しく撫でてくれた。

「お可哀想に、怖い思いをされたんですね……」

我慢していた涙がまたでて来た。

「ルーナ様、ゆっくり温まりましょうね」

服を脱ぎ、体を洗うと、手足に擦り傷があり、押し倒された時にできたものだと気付いた。

本当に怖かった。
当てもなく雨の中歩き、自分がバカだと思った。
カイル様が助けて下さらなければどうなっていたか。
また震えてしまう。

お風呂を出ると、綺麗なネグリジェをハンナさんが出してくれていた。

「カイル様のお母様のものでサイズは大きいですが、これしかなくて……」

申し訳なさそうに、ハンナさんは言うけれど、申し訳ないのは私の方だった。

「私が着てもいいのでしょうか?」
「構いませんよ。ほとんど袖を通していませんから」
「すみません、ハンナさん。ありがとうございます」

にこりと微笑んでくれるハンナさんに、ネグリジェを握りしめまた泣いてしまった。

ハンナさんと部屋に帰る途中、カイル様とオーレンさんが話しているのが見えた。

カイル様は少しくしゃみをしていて、私のせいで風邪を引いたのではと罪悪感がでて来た。

「……ハンナさん、カイル様にお茶を持って行きたいのですがダメでしょうか? もし、お風邪でも引いたら、私のせいです……」
「……では、一緒に準備しましょうね」

ハンナさんは、また優しく微笑んでくれた。

ジンジャーティーをハンナさんと作り、カイル様の部屋に行くとカイル様はもう寝ていた。

お顔を見ると少し赤い気がしたが、ハンナさんは大丈夫ですよ。と言った。

「少しだけここにいてもいいですか? 少ししたら部屋に戻りますから……」
「ええ、わかりました」

ハンナさんがでていき、カイル様のナイトテーブルにある洗面器でタオルを濡らし額にかけた。

やっぱり少し熱い気がする。

「カイル様、すみません……」

そのまま、カイル様のタオルを何度もかえ、気がつけばカイル様のベッドにもたれるように眠ってしまっていた。






目が覚めると、ダルかった体が軽くなっていた。

疲れていたのか、夕べの雨のせいかわからないが、一晩で楽になるとは我ながら頑丈だと思った。

体を起こすと額のタオルが目の前に落ち、ベッドにはもたれ掛かるようにうつ伏せで寝ているルーナに驚いた。

何故ここにいるんだ!?

まさかこのタオルはルーナがしたのか?
一晩中看病でもしていたのか?

あんなに怖い目にあっておきながら俺の心配をしていたのか、と思うとやはり今までの令嬢とは違うと思った。

そう思うと、自然にルーナの頭を壊れ物を触れるように撫でていた。




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