この政略結婚に、甘い蜜を
通路の壁に傑は背中をつけ、「あれはヤバいわ」と呟く。脳裏にあるのは先ほど姿を見せた華恋だ。華恋につけられたアクセサリーを見て、傑はフッと笑う。

「あいつの旦那、とんでもない束縛野郎やな」

ネックレスは「首輪」、ブレスレットは「手錠」、アンクレットは「足枷」、イヤリングは「魔除け」という意味が込められている。恐らく華恋は知らないだろう。

華恋の旦那はパーティーなどでチラリと見かけたことがある程度だ。いつも笑みを浮かべ、他の人間と談笑している。そんな彼に今、傑は睨みつけられているような気分になった。

「相手が相手やなぁ……」

悔しげに、切なげに、傑の唇から紡がれた言葉は消えていった。







< 120 / 186 >

この作品をシェア

pagetop