この政略結婚に、甘い蜜を
「零さーーーんんっ!」

華恋が口を開けると、零によって塞がれてしまう。二度目となる零とのキスは、傑とのあの出来事の後にされた唇がただ触れ合うものではなく、舌を絡ませるものだった。初めてのことに華恋は恥ずかしさを覚え、戸惑う。

(どうしよう……こんなの……)

零の舌は華恋の口腔内を好き勝手に犯している。華恋の舌に絡んで弄び、歯をなぞり、思考力を奪っていく。

(息が……!)

離れることのない唇のせいで、呼吸ができず苦しい。だが、それと同時に華恋の胸も苦しさを覚えていた。

(大好きな人とのキスってこんなに怖いものだったかしら?)

初めて零に唇を奪われた時、華恋は全く嫌ではなかった。自分の中に抱いていた恋心に気付き、恥ずかしさはあったものの怖くはなかった。だが、今はまるで他人に無理矢理キスをされているかのように恐怖を感じている。

「ッ!」

恐怖と苦しみから華恋が両手で零の胸板を押すと、その両手は呆気なく零の片手によって拘束され、ベッドに縫い付けられてしまう。
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