この政略結婚に、甘い蜜を
「プレゼントって何だったんだ……」

何故、誕生日プレゼントを選ぶのに結婚式場を見に行かなくてはならないのか、零にはさっぱりわからない。ただ、華恋を傷付けてしまったことに後悔するだけだ。華恋なら、訊ねればきちんと説明してくれるはずなのだから……。

「華恋……」

零の胸が痛みを発し、そこから血が溢れ出ていく。頬に温かい雨が伝って落ちていく。愛している人に嫌われるのは、これほどまでに苦しいのだと初めて知った。

どれほどそうしていただろうか。スマホの振動で零は顔を上げる。華恋から電話かと思いスマホを手に取ると、電話をかけてきたのは龍羽だった。気分を沈ませながら零は電話に出る。

「もしもし?」

「零、さっきはすまなかった。俺が全部悪いんだ。だから華恋さんを責めるのはやめてくれ!」

もしも、華恋が家を飛び出して行かなければ、今も気持ちが落ち着かずに龍羽の言葉を遮って怒鳴りつけていただろう。だが、気持ちが沈んでいる零は黙り込んだまま、龍羽が華恋に誕生日プレゼントのことを相談してきたことから話すのを聞いた。
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