最初で最後の恋をする
籠の中の姫
生まれた時から一生が決まっていた、みやび。

しかしその事に、何の不満もなく生きてきた20年間。



これからも、親に言われるまま生きていくんだと思っていた━━━━━━


「みやび様、お車の準備ができましたよ」
みやびの執事・冴木(さえき)が、部屋に呼びに来た。

國枝財閥の愛娘、みやび。
母親は早くに亡くし、父親に寵愛され育ってきた。

今も冴木が常に傍につき、守っている。

その為か一人では何もできない。
完全な“箱入り娘”である。


「みやび様、どうぞ?」
冴木が、後部座席のドアを開け中に促す。

「ありがとう!」
みやびが微笑むと、冴木も微笑んだ。
「では、参ります」
「うん」

静かな音楽が流れる車内。
「みやび様、今日からですね!パーティー」
「え?そう…ね」

「………みやび様?」
「ん?何?」
バックミラー越しに顔を窺う冴木に、小さく微笑む。

「パーティー、お嫌ですか?」
「嫌ってゆうか、嫌い」
「みやび様?」
「お父様達の話は、なんだか怖くて……」

「そうですね。仕事の話ばかりですもんね。
パーティーと言っても、取り引きとかお金のやり取りとかそんな話ばかりですし」
「うん…」

「大丈夫ですよ」
「え?」
「僕がいます!」
微笑む冴木に、みやびも微笑み返すのだった。


「━━━━━━あ!そう言えば!」
「ん?」

赤信号で止まり、冴木が振り返り言った。
「波牙 厘汰様、ご存知ですか?」

「あー、波牙グループの」
「はい、厘汰様も今日からパーティー来られるそうですよ」
「そう……とっても怖い人なんだよね?」
「“あの”毒牙組(どくがぐみ)のカシラですから。くれぐれも、お気をつけください」

毒牙組とは━━━━
この街一帯全ての暴走族や不良等の束ね、ヤクザも一目置く程の軍団で誰もが知ってる有名人だ。

厘汰はそのトップに君臨している。

毒牙組は色々言われていて“ヒーロー”や“最悪の悪魔軍団”と呼び名がある。


「どちらにしても、僕がお守りしますよ!」
不安そうなみやびに、微笑み言った冴木。
「うん、ありがとう!フフ…」

「何?」
「冴木、お兄様みたい…!」
「お兄様って……」
冴木は苦笑いをして見る。

「でも、暴力はやめてね」

「はい、もちろんでございます」

「冴木は、格闘技習ってたから強いんだから!
冴木、私のこと守ってくれる頼もしい男性だけど、見境がなくなる時があるから」

「はい。肝に銘じます」

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