最初で最後の恋をする
“好き”という感情
「みやび様、どうされたんですか?」

それから屋敷に帰りつき、みやびはソファでボーッとしていた。

冴木が心配し、声をかけてきた。


そんなの、私が聞きたい━━━━━━

みやびは今まで感じたことのない感情に包まれていた。

厘汰のことを考えると、胸がドキドキして苦しいのだ。
そして心臓がうるさく鳴り、痛いのだ。


「早く、明日にならないかな?」


「え……みやび、様?」
「何?」
「厘汰様に、会いたいんですか?」
「え?」

「つい先程、別れたばかりなのに?」

「そんな…こと……」

「貴女はもう……そんなにまで、厘汰様のこと……!」

「冴木?何言ってるの?私、何も言ってない」

「僕が何年、貴女に仕えてると思ってるんですか!?その間、ずっと貴女を見てきた僕がわからないとでも?」

「冴木…」

「……………みやび様の心の奥底の声を代弁して差し上げましょうか?」

「え……?」

「厘汰に会いたい。
胸が苦しい。ドキドキして心臓が痛い。
早く、会いたい。
会って、手を繋ぎたい。
抱き締めてほしい。
放れたくない………どうですか?」

「冴木、どう…して…?」

「分かりやすく、そんな表情(かお)してますよ?みやび様」

「そんなこと…」
図星かもしれないと思う━━━━

だって、完全に否定できないから。


「みやび様」
「え?」


「そんなにご自分のお気持ちがわからないなら、思い知らせて差し上げましょうか?」



━━━━━━━!!!!?
冴木が一瞬で、みやびをソファに押し倒した。

そしてみやびを組み敷いた。

「━━━━━━冴木!!?
嫌!!退いて!!」

「みやび様、キス…していいですか?」

「は?いいわけないでしょ!?
冗談はやめて!!」
口唇をなぞってくる冴木を、睨み付けるみやび。

「だったら!
厘汰様ならどうですか?」

「え……」

「今、貴女を組み敷いてるのが、厘汰様なら……
キス…していいですか?」
「………////」

「あ、身体が熱くなりましたよ?みやび様」

「冴木、やめて!!」
必死に冴木を押し返す、みやび。

ゆっくり冴木が、ソファから降りた。
そして、下に跪いた。


「…………想定外です」
冴木が、ポツリと呟く。

「え?」
「みやび様、これは想定外です」

みやびがゆっくり起き上がる。
今度はみやびを見上げ、はっきり言った。

「ホテルで、何があったんですか?」

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