最初で最後の恋をする
最初で最後の恋をする
「じゃあ…お母様は━━━━」

「あぁ…“最初から”一人で死ぬつもりだったんだ。その前に俺に愛されて死にたいって」

後日、みやびは厘汰と共に充矢に会いに来ていた。


みやびの母親は、充矢を“本気で”愛してしまった。
でも、出逢った時には既に既婚者でみやびもいた。
悩みに悩み、死ぬ決意をしたらしい。

夫とみやびを裏切った自分が許せなくて……

夫と娘を裏切る自分が許せない。
でも、充矢を諦めるなんてできない。


「彼女が選んだ選択は、きっと間違いだと思う。
でもね。俺は、ある意味その方がいいと思ったんだ」
「え?」

「俺が彼女と一緒に駆け落ちしたとしても、彼女は生き続ける限り、旦那とみやびちゃんを裏切った罪悪感に襲われて生きていくことになる。
俺が彼女の前から消えることも考えた。
どちらにしても、彼女は“死”を選んだはず。
だったら全てを俺が背負って、最期に彼女を愛して地獄におくりたいと思った」

「そう…ですか……」

「俺がこんなこと言うべきじゃないけど……」
「はい」

「お母様のことを、恨まないで欲しい。
だって、今の恋人や結婚相手がその人の運命の相手かどうかなんて、誰にもわからない。
結婚してから、出逢うことだって十分あり得る。
だから、不倫や離婚なんてものがこの世には存在するんだ。
彼女は……君のお母様は、確実にみやびちゃんのことを愛してた。
ただ……俺達が出逢うのが、遅かっただけ。
“今の”みやびちゃんなら、わかるんじゃないかな?
心から愛した人を失いたくないって気持ち。
その為なら、全てを捨てる覚悟」

「はい…」



充矢の所からの帰り━━━━━

厘汰とみやびは、手を繋ぎゆっくり歩いていた。

「厘汰」
「ん?」
「人を好きになるって、とっても素晴らしくて綺麗だけど、残酷なこともあるんだね……」

「あぁ…そうだな。
でも、最初から本当に好きな相手に出逢える人間は少ないんじゃねぇかな?
だから、出逢いと別れがあるんだと思う」

「そうだね!」

「俺とみやびは、その数少ない確率の中で出逢えたと思ってる。
それこそ……“運命”だって!」

「うん!」

「みやび」
「ん?」

「俺が、みやびを幸せにする!
だから、信じてついてきて!!」

「うん!もちろん!」




「俺と、最初で最後の恋をしようなっ!!」













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