最初で最後の恋をする
毒牙組のカシラ
厘汰は既に心が奪われていた。


パーティー終了後、厘汰と武虎は毒牙組で借りているマンションの一室にいた。

パーティー中、みやびと話したくても冴木が邪魔をしてなかなか話すことができなかった厘汰。

みやびの笑顔が忘れられない。
掴んだ手の感触も、抱き締めたぬくもりも。

折れそうな位細いのに、とても柔らかく気持ちよかった。抱き締めた時の甘い匂いも忘れられない。

もっと傍にいて、話がしたかった。

そして出来ることなら…………


あのまま連れ去りたかった。


こんな気持ちは初めてだった━━━━━━━


「━━━━汰?」
「会いてぇ…」
「厘汰!!」

「……っあ!何だよ!?」

「どうしたの?会いてぇって、誰に?
………あ!もしかして、みやび?」
「あぁ…」
「えーと、あいつ…冴木!!
あいつが邪魔して、話させてくれなかったもんなぁー」

「あいつ、何なの?」
「だよなー、やけにみやびにくっついてたな!」

「何かあったんすか?」
そこに、仲間の戸田(とだ) 灯夜(とうや)(通称・トトヤ)が声をかけてきた。

武虎が簡単に灯夜に説明する。

「え!!?國枝の姫に会ったんすか!?いいなぁー!どうでした?姫」

「ヤバいよ!可愛すぎて!」
武虎が言った。

「…………武虎」
「んー?」


「どうすればいい?」

「は?何が?」

「どうすれば、みやびと仲良くなれる?」

「…………厘汰、本気なの?」

「わからない。
でも、今はとにかく会いたい」

「明日、國枝の屋敷に行ってみる?今日はさすがに遅いし」

「あぁ…」


次の日、朝一番に厘汰と武虎は國枝の屋敷の前にいた━━━━━

「申し訳ありません。
みやび様は、大学に行ってらっしゃいますので不在です」
國枝家の使用人が、頭を下げ言った。

「だったら、大学はどこだよ!?」

「………」
「早く言えよ!」
厘汰が使用人に凄む。

「みやび様に会ってどうするおつもりですか?」

「何故、てめぇに言わねぇとならないの?」

「みやび様は大学卒業後、お見合いをして結婚をされます」

「は?」

「だから、関わるなってこと?」
武虎が言った。

「はい。
ですので、あまりお会いしない方がいいのでは?」
使用人は、厘汰の心の中を見透かしたように言った。



“手遅れになる前に諦めろ”
そう言っているような、目だった。

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