これは、ふたりだけの秘密です
思いがけない展開


翌日の午後、怜羽は新しいデザインの打ち合わせに表参道へ出かけた。
ここにある小物を扱う会社が、少女向けのデザインを依頼してくれるのだ。

今回はいつもより内容の濃い打ち合わせになった。
マスキングテープなど、文具のデザインをしてみないかと言われたのだ。

テキスタイルデザイナーとしてだけでなく、
最近は雑貨のデザインも注文を受けるようになっていたが、
文房具は初めてのチャレンジになる。


参考になるものがないかと、つい代官山辺りのショップを巡ったので、
白金台の家に帰宅したのは四時前になっていた。

家政婦の日菜子は今日は遅出だから、午後七時までの勤務だ。
夕食の支度があるから真理亜の世話をしながらでは忙しいかっただろう。

「ただいま~」

急いで玄関に飛び込むと、見慣れない男性用の皮靴があった。
つま先の尖ったデザインは若向きだが、兄はこんな茶系の靴は履かない。

(お姉さんのご主人(ダーリン)? まだ帰国してないよね)

気になりながらも、いつもの様にのんびりとキッチンへ声をかけた。

「遅くなってごめんなさ~い」

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