これは、ふたりだけの秘密です
重ねる嘘


白金台から成城の片岡家までは30分以上かかる距離だ。
車内で真理亜がぐずらないか心配だったがSUV車の乗り心地がいいのか、
終始ご機嫌でいつになくはしゃいだ声を上げていた。

「今日は、どうして片岡家に?」

真理亜が落ち着いたので、怜羽は後部座席から郁杜に声をかけた。

「弟夫婦に会って欲しいんだ」
「弟さん?」

郁杜のすぐ下の弟の煌斗のことだろう。

「ああ、今回の事情は話している。母の情報も弟が知っていたんだ」
「そうだったんですか……」

離婚してから一切の連絡を取っていなかったから、
『調べる時間をくれ』と彼が言ったんだと今さらのように気がついた。

「まさか、颯太の子だったとは……」
「あの、そのことは……ごめんなさい」

怜羽が郁杜を父親と間違えたことには、もう触れてほしくなかった。

(困ったわ……この人は颯太さんと私の関係をどんな風に思っているだろう)

朱里のことはまだ話せていない。
そっくりとはいえ、郁杜と颯太を間違えるくらいだから深い付き合いだったとは思わないだろう。ゆきずりで彼と寝てしまったとでも考えているかもしれない。

(早く話さなくちゃあ……)

誤解されたままだと、嘘に嘘を重ねていきそうだと怜羽は焦っていた。




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