【完結】私、実はサレ妻でした。

 
「実乃梨……」

 夫の表情は、とても悲しげだ。
 今にも泣きそうな顔をしている。

「あなた……。これにさ、サインしてくれる?」

 私は引き出しからサイン済みの離婚届を取り出して、夫の目の前に置いた。

「……え、これ、って……」

「見れば分かるでしょ?離婚届よ」

「そんな……っ」

 あなたとはもう離婚よ、もう家族でも夫婦でもない。

「私たちを裏切ったことの代償は大きいわよ。……私たち離婚、しましょう」

「実乃梨……」

 離婚届を目の前に突き付けた時の夫の表情は、すごく動揺していたーーー。

「あなた前に私を抱いた時……円香って言ったの覚えてないでしょ」

「え……?」

 あの時の私の気持ちが分かる?
 あの時の、ものすご苦しい気持ちが……。

「あなた私の名前じゃなくて、私のこと一度だげ円香゙って呼んだのよ。……その時の私の気持ちが分かる?」

 あんなに苦しいと思ったことはなかった。
 私のことを別の女の名前で呼ぶなんて……。ものすごく辛かった。
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