【短編】追憶


何度も彼女の家に通って頭を下げ続けること
1か月。


12月、
彼女のご両親が全てを話してくれた。


「これからどうするか、君たちに任せる。
覚悟があるなら会ってきなさい」

その言葉と一緒に入院先を教えてくれた。


覚悟、と言われてドキッとした。


「仕事が忙しかった」

その一言で蔑ろにしてしまった彼女に、
もう一度信じてほしいと言えるのだろうか。


日に日に落ちて行った食欲は、
彼女の作るご飯を求めていて

身体は彼女の温もりを求めていて

心も、彼女を求めていて。


正直なところ、
僕はもう、限界を迎えていた。

これまで当たり前だった2人の日常が
急に君がいなくなったその日から崩れ落ちて、


いや、気が付かなかっただけで
急ではなかったのではないか?


限界を迎えていたのは、彼女の方だ。


何度も伝えた

「好き」

と

「大切にする」

それから

「守るから」


口先ばかりで行動では全く示せていなかった。



そんなことを考えるばかりで、
だけど、たどり着く答えはいつもひとつだった。





よし、会いに行こう。





1週間がだっただろうか。


初雪が降ったその日、勇気を出して彼女に会いに行くことにした。

教えてもらった病室に入ると、

ベッドの上から気持ちよさそうに窓の外を眺めていた君は、

こちらに気づくとニコッと笑いかけて

「はじめまして」

と挨拶をした。

< 3 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop