俺の世界には、君さえいればいい。




今日だって着物もメイクも、ナチュラルに施されていて由比さんの可憐さを最大限に引き立てていた。

そんなものに目を奪われていた男がいたことを本人は気づいてなくて。



「じゃあ俺いくから」


「あっ、おいちょっと主計!!」



いつかに学校内で立った噂だって由比さんを貶すようなものばかりだった。


そんなものを耳にする度に俺は腹立たしくて、同じくらい悲しくなって。

それでも家柄を隠して、どんなに冷たい言葉が飛び交っても身分を隠しつづけて生きる由比さんにどんどん惹かれて。


だから俺が守ってやりたいって気持ちも最初より強くなった。



「由比さん!ごめんなさい遅くなってし───…それ、」


「あ、櫻井くん。自動販売機で売ってたから買っておいたの」



由比さんが持っていたのは、おしるこ。

そしていま俺が手にしているのも、おしるこ。


なにか食べられそうなものを買ってきますね、と言って待たせていたのは俺だったとしても。

まさか被るなんて……。



「あっ、え、もしかして……」


「…はい、なんか美味しそうだったので」


「ふふっ、4つになっちゃったね」



こんな未来がこれからも約束されるなんて、俺たちの家に少し変わったしきたりがあって良かったと。

俺は由比さんに出会ってから何度も何度も思っている。



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