俺の世界には、君さえいればいい。




「───…さ、櫻井くんっ、だいすき…!」


「っ、!」



満面の笑みで、ぎゅうっと抱きしめ返した。


守ってくれる。

この先なにがあっても櫻井くんが私を守ってくれるから。



「…ねぇ、わりとお似合いじゃない…?」


「うん、お花飛んでるよね…、平和すぎない?」


「……なんか、由比さんだから逆にいいって感じしてきた…、」



いつの間にか周りの声がそんなものに変わっていたこと。

嬉しさに溢れた涙は櫻井くんが拭ってくれる。



「あ、櫻井くん…ネクタイちょっと曲がっちゃってるよ、」


「…じゃあそれ、由比さんが俺の家で緩めてくれないとですね」


「えっ、」



櫻井くんが前に言っていた言葉の意味がやっと分かったもしれない。


ネクタイを緩めるのは私の前だけ───その言葉の意味。


それはいつか結婚して夫婦になって、櫻井くんが制服じゃなくスーツに変わったとして。

そんな櫻井くんが「ただいま」って言ってネクタイを緩める。


そんな彼を笑顔で出迎えられるのは、私なのかなって。



「出たムッツリーーーっ!!わざわざ緩めなくても曲がってるだけなので戻せますぅ~」


「……うるせぇ」


「はい否定しないーーっ、かなの!こいつネクタイでかなのの手首とか縛ってくるかもだから気をつけなさいよ~!!」


「え…?もうされたよ…?」



私の言葉に、ピシッと教室の空気が凍った。



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