俺の世界には、君さえいればいい。
*膨らむ気持ち*




『電車がもし混んでいたら避けてください。時間をずらして、俺のほうは大丈夫ですから』


『あと絶対に厚着してきてくださいね。一応ストーブは用意されてるとは思いますけど、応援席はきっと寒いんで』


『それから万が一不審者と遭遇したときは、とりあえず周りの人に知らせてください。
ひとりでどうにかさせようと思うことだけは絶対に駄目ですよ。いいですか?』



だんだんボリュームたっぷりになってゆく注意事項。

まるで説明書を最初から最後まで読み聞かせられてるみたいだった。


うん、うん、はい、わかりました。


そんな返事を繰り返したのは、当日の今日から戻って先週あたりから。



「よかった…、ちゃんと到着できたみたい…」



区が設立する体育館。

袴姿の高校生が散らばる中、私の緊張感も上がってくる。



「───由比さん!」


「あっ、櫻井くん!」



慣れない体育館に入ってキョロキョロ見渡していると、いちばん目立っていそうな男の子が小走りに向かってきた。



「危ないことはありませんでした?変なやつとか、」


「うん。大丈夫でした…」


「よかった…。席、俺こっち取ってあるんで」



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