ストロベリーバニラのキス ひねくれた純愛(おまけの小話・その2)

教授の恋愛感情問題

「なに、自己完結しているんですか?
幸せになってもらいたいって・・・
何を勝手に言ってるのですか!」

教授はうつむいて
自分の足元をずっと見ていた。

かわいらしい花のついた、
華奢な白いサンダルをはいている。

俺は教授の腕を掴んだままだ。

「その・・
私は
君が求めるような恋愛対象では
ない、ということだ。」

教授は
ふわっと広がったスカートの裾を払うと、バックを肩にかけた。

「トーマス・ハミルトンが死んで、
私は解放されたのかもしれないが、一人になった。」

教授はそこで、一回息継ぎをしてから、

「トーマスは、私が誰かと親しくするのを禁止したので、
プライベートの人間関係が
作れないままで来てしまった。」

「それに、論文の下読みとか、
講義録の作成で、毎日が勉強で・・・
トーマスの代わりに
原稿も書かねばならなかったし」

教授は視線を合わさないで、
早口で言った。

「カーライル、
私は君の期待に沿えるような
行動が、できないと考えている。
だから・・・」

そう言うと、
話は終わりだというように、
俺の手を離そうと、体の向きを
変えた。

「だから・・なんですか?」

俺は教授の腕をつかみ、
博物館の隅の大きな円柱に、
追い詰めた。

俺はたばこを投げ捨てて、
教授をはさむように、両手を柱につけた。
「教授はどうしたいのですか?」

教授は俺の肩越しに、
ずっと遠くを見ていた。

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