一縷
再来

心の中は言うまでもなく、帰りたいで一杯になった。

隣に座る男は、紛れもなくあの日同じベッドで眠っていた相手だ。

「時間もないし、手がかりもなくて、捜すのに苦労した。そういえば給料日だと言っていたのを思い出して、今日なら会えるかと」

わたしは給料日の話もしていたらしい。

「本当に見つかって良かった」

にこ、と笑う顔が眩しくて直視できない。

へら、と曖昧に笑い返した。

「ご注文お決まりですか?」

お絞りを持ってきた店員さんに、男はビールを注文した。

「あの、すみません、この前は急に帰ってしまって……」

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