一縷



あれ……?

「学生さん、来ました?」

近くの専門学校に通う白石さんが振り向く。カウンターにがっつり参考書を広げているが、接客態度は満点なので目を瞑る。

「いえ。18時からですよね? もう来ないんじゃないですか?」
「え、そんなことある?」
「ばっくれみたいな」
「ばっくれられたか……」

電話の感じは普通の子っぽかったけど。声で判断は難しいか……。

はあ、と溜息を吐いた、分を取り戻そうと息を吸った。

「そんなヤバいんですか?」

白石さんが首を傾げる。

静かに微笑んで事務所に引っ込んだ。

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