黒翼(ブラックウィング)

辺りがオレンジ色へと包まれる時間帯。


小学生と見られる数人の男女は楽しそうに、そして無邪気に鬼ごっこに夢中である。

そんな中、全て形がバラバラの丸を空へとユラユラと飛ばす高校生の女が、その場に似合わず無の表情でベンチに座っている。その横には同じくらいの男が女を挟むように隣に座る。


小学生はその男女に気づきながらも見ないふりをして、鬼ごっこを楽しむ。



「お前、高校生にもなってしゃぼん玉するなんて、餓鬼かよ」

「リョウ」


リョウと呼ばれた男はそれ以上何も言わなかった。いや、もう一人の男がそれ以上言うなと目を向けていたため、仕方なくといったように言葉を止めた。


女はそんなやり取りを分かっていながらも、息をゆっくりと吐き、大きさの違うしゃぼん玉を作っていく。



それは風に乗せられ飛んでいくもすぐに消えてしまう。女はまるで自分のようだと思いながら全て消えるまで見つめていた。





ーー辺りは暗くなり七つの子が流れだしてくると、小学生たちは帰り支度をする。

高校生の男女は未だにベンチに座っている。



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