桜が咲く頃に、私は

「……うん。でさ、どうもあの二人が怪しいんだよね。え? 私? もうすぐ死ぬってのに、出席日数とか単位とか気にする意味ないでしょ。一回学校に戻るけど、あいつらが来たら連絡して。ん、じゃあね」


病院の外のベンチに腰掛けて、電話を切って項垂れる。


私……別れた男の為に何やってんだろ。


心残りになるってことは、まだ好きだとでも思ってるわけ?


どう考えたって私が友紀に勝てる要素がない。


最後まで……広瀬は私を名前で呼んでくれなかったんだから。


友紀ちゃんと桜井さん。


これが本物の彼女と、なんで付き合ったかもわからない女との差だよ。


悲しいし苦しい。


でもそれ以上に、私は死ぬんだからこれでいいんだと思える。


いや、思わなければ、いつまでも引きずってしまう。


「よしっ。空にも言っとくか」


仕事中だとわかっているから、メッセージでこの件のことを知らせる。


ライブハウスで見掛けたことがあると言っていたけど、それも随分前のことだろうし、今でもいたりするのかな。


問題は、どんな罰をどうやってあの二人に与えるかだ。


やり方によっては、その恨みは全部広瀬に向くかもしれないのだから。
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