幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。
【第5章】波乱と不安


 年があらたまって、1月。

 年末年始の休みを経て、仕事始めの日が来た。
 その日出勤すると、永森さんが朝のミーティングで今年の抱負などを述べた後、こう続けた。

「そして新年早々、ビッグニュースがあります」

 嬉しそうに告げた永森さんの言葉の続きを、私を含む他の3人は期待して待った。

「地元の誉れである作曲家、山根沢(やまねざわ)大岳(ひろたけ)氏の新しい自宅を、うちが手掛けることになりました!」

 おおっ、と平川さんが感嘆し、六旗さんは「えーっ」という顔で固まった。
 私は二人に先駆けて「おめでとうございます」と拍手する。平川さんと六旗さんもすぐに続き、「やりましたね」「すごいです!」と称賛した。

 山根沢大岳氏は、県内出身の作曲家で、音楽に興味がある人なら誰もが知るビッグネームだ。有名演歌歌手から流行りのアイドルに至るまで、昨今のヒット曲の4割には山根沢氏が作曲や編曲で関わっているらしい。永森さんが言った通り、地元の誉れと言われている大人物である。

 ただし、大物であるだけに、気難しい性格も持ち合わせていると噂されている。氏のレッスンに1分遅れたアイドルが出入り禁止になったとか、どうしても気に入る曲が仕上がらなかったために某演歌歌手のアルバムが発売中止になったとか。
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