俺にしときませんか、先輩。


やっとイスから手が離され、元の体勢に戻ると、一気に空気が軽やかになった。

ちら、と由都を見ると、まだ笑ってる。



「私のことはいいの、由都でしょ、問題は」

「それなんですけど、ちょっと考えてることがあって」



急に姿勢を正し出す由都。

その様子に張り詰めたようななにかを感じて気になった。



「俺、実は……そろそろしようと思ってて、告白を」



覚悟を決めたようにまっすぐな瞳に、どくん、とさっきよりも大きく心臓が揺れた。

由都が発した言葉がどこか遠く聞こえるのに、それが現実だってことはわかる。



……告白する。由都が。

そりゃそうだ、ずっと好きな人なんだから。



成功したら、もうこうやって会うこともない。由都はその子と付き合う。

じゃあ失敗したら……?

失敗したら、どうなるんだろう。


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