双子ママになったら、エリート心臓外科医の最愛に包まれました
それから二週間が過ぎた。

外はすっかり春めき、旅館の中庭の桜並木も見ごろを迎えている。

あれから蒼斗さんとは特になにもない。そもそも別れたときに私が携帯を替えたこともあり、互いに連絡先を知らないのだから。

このままなにも起こりはしない。

いつもの日常を子供たちと歩んでいく。ただそれだけだ。

「ママ~、じぃじよろこぶかなぁ?」

「うん。喜ぶと思うよ」

優斗が画用紙に書いたじぃじの絵を私の方に向けて微笑む。

「ママ~! からあげはやくたべたい!」

一方の蒼汰は、机の上に並べられた料理に興味津々でさっきからそう催促してくる。

「蒼汰だめ~! さっきママとじぃじが来てからたべるやくそくしたもん」

つまみ食いをしようとした蒼汰の背中をグイッと引っ張ったのは、優斗だ。頬を膨らませて蒼汰を見ている。

「いっこだけいいの!」

「だめ!」

「ふたりともやめなさい。蒼汰、じぃじ来てから食べるってさっきお約束したでしょう?」

取っ組み合いの喧嘩になりそうになり、慌てて止めに入った。こんなことは日常茶飯事だ。
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