双子ママになったら、エリート心臓外科医の最愛に包まれました
「俺は忘れられない。あのときここで出会ったことも。柚希のことも」

向けられた真剣なまなざし。なぜか逸らすことができなくて頬が上気していく。

「な、なにを言ってるんですか。まだ酔っぱらっているのですか? 人を揶揄うのもいい加減にしてください」

真っ直ぐに向けられるまなざしに耐えられなくなって、蒼斗の頬に置かれた手を引こうとしたその矢先、グイッと腕を引かれて気が付けば彼の胸の中にいた。

「揶揄ってなどいない。俺はずっと柚希のことを想っていた」

彼の声は切なげだ。

私のことをずっと想っていた?

そんなことがあるわけない。だって……

「蒼斗さんは結婚なさっているのにどうして……そんなことが……言えるんですか?」

戸惑いと怒りとが相まって気持ちがぐちゃぐちゃで、声を震わせながら言葉を絞り出す。

「どうして俺が結婚していると思ったんだ?」

「……それは」

蘇る記憶に胸がギュッと締め付けられた。忘れもしない。蒼斗さんとの別れを決意した理由なのだから。

心の奥底にしまいこんだ蒼斗さんとの思い出が脳裏に蘇る。

真っ青な空。桜色の風。

あの日この場所で出会い、私は彼の優しさと誠実さに惹かれ恋に落ちたのだ。
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