門限やぶりしようよ。

side 優

 儚げな美しい女性だと、気になった。物憂げな表情は妙に目を引いた。街の雑踏にそのまま消え入りそうだ。それを彼女も望んでいるのかもしれない。

 だから、気になった。俺にも、そういう気持ちがあるから。

 毎日代わり映えのしない窮屈な教室で成績順に並べられ、生きる理由さえわからない。むしろ生きる意味なんか、あるのか。

 そんな中舞い降りた話しかける唯一のチャンスは、逃さなかった。

 瞬発力だけはある方だ。戸惑ってはにかむ曖昧な笑顔を、いつか俺の手で満面の笑みにしてあげられたら。


◇◆◇


 あの人を迎えに行くためには、どうするか。別れてからずっと考えてきた。無駄に考えの回る頭脳は全てこの時のためだと知った。

 成功するには、とにかく資金が要る。愛はくれないが金に糸目のつけない両親から貰ってただ貯めていた金を投資することも考えたが、短期間で結果を出すためにはある程度の高いリスクを犯すしかなく、それは時間の無い自分にはあまりにも危険すぎた。

 俺には、再スタートを切れる時間がないからだ。
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