絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
《ニィャー(マーサ。隠れてなにをコソコソやっているかと思えば、こんなところで〝禍の子〟に情をかけおって)》
 ……禍の子?
 初めて耳にする単語だった。しかし、それがわたしを指しているのはすぐにわかった。
《ニャー(長老様、申し訳ございません!)》
 ヤマネコのコミュニティの最高権力者である長老に名指しで指摘を受けた母ネコは、首を竦めて詫びを叫んだ。
 長老はヤマネコ社会における重要な意思決定を一手に担っていたが、彼はこれまでわたしの存在も、わたしに対する仲間たちの傍若無人な態度も、静観の構えを貫いていた。当然、わたしを助けることもなければ、仲間たちを諫めることもなかった。
 その彼が、今は鋭い眼光で、正面からわたしを見つめていた。そうして彼は無言のまましばらくわたしを見下ろし、やがてゆっくりと口を開いた。
《ニィャー(そなたを追放する。出てゆけ、そして二度と我らの森に立ち入ることは許さん)》
《ふ、ふみゅ(そ、そんな……)》
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