絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
《ニャーォ(承知しました!)》
 わたしは茫然自失のような状態のまま、長老の指示で嬉々として集まって来たヤマネコたちの一匹に首のうしろを噛まれた。くしくも年若いヤマネコたちというのは、普段からわたしを虐めていたネコたちの筆頭だった。
 乱暴に歯を立てられて運ばれる痛みと苦しさに、うめき声が漏れる。彼らの耳にも届いたはずだが、その後もわたしの扱いに変化はなかった。
 母ネコは無言のまま、無慈悲に運ばれていくわたしの姿を見つめていた。
 ……おかあさん、最後までヤマネコになりきれなくて、あなたの娘になりきれなくてごめんなさい。
 心の中でささやいた謝罪の言葉は、果たして彼女に届いたのかどうか……。母ネコとその隣に寄り添うように立つ長老の姿はあっという間に遠ざかり、生い茂る木々に隠れて見えなくなった。
 もしかすると、母ネコが絶対に明かさなかったわたしの父は、長老だったのかもしれない。そして母ネコだけしか知らないと思っていたわたしの秘密を、本当は彼も知っていたのではないか。わたしがヤマネコと人間、ふたつの姿を持つことを知りながら、母のためにずっと黙認していたのでは……。
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