絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
 まぁ、これについてはおいおい説明するとして、こんなふうに人間とヤマネコ、ふたつの姿を持つわたしのことを、母ネコはひどく気味悪がった。授乳期はなんとか育ててくれたが、乳離れを期にわたしは完全に捨てられた。
 以来、わたしはこうしてひとり、仲間たちが暮らす森の端っこで細々と生き繋いでいる。ヤマネコとして生まれてから一年足らず。いまだに名前はないけれど、日頃、ヤマネコの仲間たちからは『この、役立たず』『おい、グズ』と侮蔑交じりに呼ばれている。わたしが月乃の時の感覚でヤマネコらしく振る舞えないのが原因とはいえ、まったくもって世知辛い話である。
 ちなみに、前世の記憶を持って転生したわたしの意識が完全に月乃なのかといえば、意外にもそうでもない。ヤマネコの本能に引きずられてか、慎重だった前世の月乃より今のわたしの方が直情型で、思考も幼い。行き当たりばったりな行動を取っちゃうことも多かった。もっとも、これは単にわたしがいまだ成描にならない仔ネコだからかもしれないけれど。
 ――くぅぅう~、きゅるるるる。
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