【短】恋するうさぎとズルいオオカミ。
恋するうさぎ


───ガシャーン!


「どうなってんだ、この店は!」

「もっ、申し訳ありません……!」



日曜日の昼下がり。

いつもごった返す忙しいこの時間に、よりによって、トラブルが起きた。


目の前には、大声を上げる中年の男性。一応、お客様。


「客の料理にこんな虫入れやがって、ナメてんのか?」


男性が指差すお皿の中には、そこそこ大きめの黒い虫の死骸が入っている。


「そのようなことは決して……」

「なにお前、俺が嘘ついてるとでも?」

「……っ、いえ」


威圧のある声に、少し戸惑う。


けど、絶対嘘だとわかるから、引き下がれなかった。


高1からこの喫茶店"すみれ"でバイトとして働いて、1年と少し。


このクレーマーの男性の顔は、何回か見たことがある。


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