もう、離れるな 〜地味子×チャラ男の一途すぎる両片思い〜
琴莉の父親は、そう言うと俺の前にスマホを見せてきた。

液晶画面がひび割れているが、かろうじて操作ができる、血がべっとりとついているスマホ。

可愛らしい、小鳥の絵が描かれているスマホカバーから見ても、持ち主は一目瞭然だった

どれだけ琴莉が痛い思いをしたのかは、そのスマホが教えてくれた。


「君は何故、琴莉に返信をしてやってくれなかったんだ?」


琴莉の父親は、そう言いながら琴莉のスマホのライン画面を開いた。

そこにはこう書かれていた。



「佐川琴莉です。放課後、あの公園で待ってます。渡したいものがあります。絶対に来てください」



俺は、送信時間を確認してから、急いで自分のスマホを確認する。

何回、何十回と見比べて見ても、見える結果は一緒。

俺は、琴莉からのメッセージを受け取ってはいかなかった。

琴莉の画面は既読になっているにも関わらず。


「行かないなら、一言君が行かないとさえ言ってくれれば、琴莉はこんな目に遭わなかったかもしれない。そう思うとね……君を恨むのは筋違いだと分かっているが……」


何故俺の母親が、俺がここにくることを止めたのか。
何故琴莉の母親が、俺に敵意剥き出しだったのか。


全部がつながった。

琴莉の事故は、俺が琴莉が待っている場所に行かなかったから起きたことだと、全員が思っていた。

もしかすると、琴莉もそう思っているのかもしれない。



俺には何一つ心当たりがないと言うのに。
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