幸せなひとときをきみに〜隠れ御曹司の不器用な溺愛〜
昨夜は麻衣が思っていたことはわかった。

わかったが、いくらなんでも俺が麻衣をセフレだと思っていたと思われていたことがショックだ。

そりゃないだろ

っていうか、通信手段をブロックされたこともキツい。

ぜったい、あのお嬢と麻衣を二股していたと思われているだろうし、とりあえずそのことについてはきっちりと落とし前をつけるべく、出社そうそう社長室へ向う。

社長室にノックをしてから返事も待たずに入る。

「清ちゃんダメだよ、返事を聞いてから入らないと、オレが秘書とイケないことしてたらどうすんの」

「変態社長だと社内LINEに知らせておくよ」

主に店舗のデザインをやっているwithオフィスの社長、堰 翔梧(せきしょうご)は従兄になるが、回りが気を使ったり、俺の実家について詮索されることをよしとしないため社長と俺が親族関係にあることを伏せている。

しかし、今回のようなことがおこらないようにしっかりと釘を刺しに来た。

「昨夜、部長に東福社長とそのご令嬢との会食に付き合わされたよ」

「おほっ、そりゃお疲れさん」

明らかに楽しそうだ。

「俺はこの会社では一社員で、経営には全くもって携わってない」

「だね」

「よって、会社の為に取引先のご令嬢とお見合いをする筋合いはない。そうだな?」

「だね」

「それならば、上司命令とか言ってご令嬢と見合いさせられたのはどう言う訳だ」

「実は、初耳で部長が勝手にやったようだ。一応謝っておく」
「ごっめ~ん」

イラッとした。俺よりも年上のこの従兄は人生の6割はふざけているように感じる。

「あのホテルに麻衣が来ていて、ご令嬢と一緒の所を見られて変な誤解をされてる」

「わぁお!」

「おい、今後こんなくだらないことに俺を巻き込むなら・・・」

それまで飄々と話を交わしていた翔梧があわてて

「ごめん、ごめん部長にはオレからちゃんと言うから。今、ここを出て行かれたらマジで困るからさ」

「じゃあ、よろしく」

用事が済んだからさっさと戻ろうと思ったところで

「麻衣ちゃん大丈夫だった?」

「全然、大丈夫じゃねえよ」

多分、今オレは凶悪犯の顔をしている、これ以上翔梧と話をしても仕方が無いのでドアノブに手をかけたところで

「だから、さっさと結婚すりゃよかったのに、麻衣ちゃんに捨てられちゃった?」

今一番聞きたく無い言葉だ、翔梧の言葉に返事をせずに社長室を後にした。







やはり居ない・・・

電気のメーターの動きが弱い、まだ部屋に戻ってきていないんだろう。

結局、電話もLINEもブロックされているため直接部屋に行く以外に連絡方法がわからない。

かといって、マンションをうろうろしすぎても不審者だと思われる。

しかたなく帰ることにした。
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