幸せなひとときをきみに〜隠れ御曹司の不器用な溺愛〜
「天雲さん」
振り返ると婚活の中島くんだ。

「え?もしかして婚活パーティに行くんですか?」

その一言で、近くにいた人達の視線が集まってしまった。
私は焦って中島くんの腕を引いて観葉植物の陰に連れて行くと
「声でかいし、そんなこと大ぴらに声に出さないで」

中島くんはハッとして
「すいません、天雲さんおしゃれしていて婚活パーティにいくのかと焦ってしまって」
「ところで、今ならLINEのIDを教えてもらっていいですか」

なんとなく柴犬が尻尾をふりながらお座りをしているように見える。
でも忠犬っていうタイプじゃないよね、忠犬っぽくみせているちょっとあざとい系っぽいかも。

一瞬笑いそうになったのを堪えて
「婚活はやめたの、IDもごめんね。じゃあ、私は急いでるから」

「え?どうして」

説明とか必要ないし、そもそも中島くんは普通にモテそうなのにわざわざ年上の私を選ぶ理由がわからない。
まだ何か言っているように聞えるえるが、清太郎の所へと急いだ。

ビルから出ると目の前の道路に駐車しているブルーメタリックのアルファロメオからスリーピースをビシッと着こなした清太郎が私に気がついたらしく、運転席から降りると助手席側のドアの前に移動していた。
車に乗り込むところで「天雲さん、オレ諦めませんから」と婚活中島くんが叫んだ。

え?何???



すっかり、車内は変な空気になってしまった。

「あれ何?」
清太郎はあきらかに不機嫌だ。

「婚活パーティに来ていた子、説明したでしょ」

「麻衣は本当は若い男が良かったのか」

多分、嫌みだろう。てか、LINEのIDだって教えていないし、何の問題もないじゃない、どうしてそんなに責められないといけないのかと思ったら、無性に腹が立った。

「だったら言うけど、清太郎だって女子大生がいいじゃないの、若くて可愛いもんね」

「え!」

慌てたように運転中にもかかわらず助手席を見る清太郎に「運転中でしょ、前を見て」と一喝するとすぐに前を向いて運転を続けている。

「だから、あれは・・・」

「私も何もないって言ったよね?疑ってる?」

清太郎はため息をついてから
「悪かったよ、ちょっと嫉妬しただけ、麻衣と喧嘩をする気は無いよ」


嫉妬したとか・・・ちょっと嬉しいかも。
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