幸せなひとときをきみに〜隠れ御曹司の不器用な溺愛〜
<そういうことね>
「さぁ!たっぷり元をとるわよ!」

ホテルの1人1万円のディナーブッフェ、祥子が誕生日祝いとしてご馳走してくれた。
ちょっとお高い気がするけど、今回は甘えることにした。

定番のローストビーフからライブで握られるお寿司、パイ包のスープに舌で蕩けそうな和牛ステーキ。
「いくらでも食べれちゃう」

「どんどん食べよー」

デザートには苺をふんだんにつかったタルトを食べシャンパンでとても気持ちが良かった。





あの光景を見る前までは






ホテルの正面玄関
タクシーの扉をドアマンが押さえてお客様をエスコートしている姿が見えた。

若くて可愛らしい女性が先に乗り込み男性も乗り込もうとしていた時、祥子が思わず
「あっ」
と声を漏らした。



わたしは必死に堪えたのに



男がこちらを向く。


目があったのは上司と会食のはずの彼だった。

彼は一瞬ハッとした感じだったが、悪びれる感じもなくこちらを見ている。


ニラめっこならわたしの負け。


可愛い彼女と高級ホテルから出てきて2人でタクシーに乗る姿なんか見たくない、直ぐに目を逸らし後ろを向いた。

「行こう」

「あいつ、最低だね」

「うん」

「一週間くらい、もっとでもいいけどしばらくうちに来ない?いや、おいで。一人でいちゃダメだから」

「でも」

「さっ、とりあえず麻衣の部屋に着替えをとりに行こう」

確かに、一人でいるのは辛い。祥子の好意に甘えることにした。
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